さくらだより




<第15回> 秋田木目金について

  2018年11月9日

杢目金屋では年に2回開催の「木目金フェア」にて、江戸時代の木目金作品の展示ご紹介も行っています。この11月のフェアでは、正阿弥派の華麗な刀の鐔を、その形をモチーフとした鐔ジュエリーと共に展示しています。
今回はこの鐔の解説を通して木目金の元祖である正阿弥伝兵衛、そして秋田木目金についてご紹介したいと思います。

 

木目金鐔 無銘 江戸時代中後期 赤銅 銅 金 銀

フェアにて展示するこの鐔は「四つ木瓜(よつもっこう)」と呼ばれる形で、江戸時代でも鐔の形として人気があったようです。多くの実をつける瓜の断面の形に似ていることから、子孫繁栄を意味する縁起の良い形として用いられていました。金・銀・赤銅・銅によって制作された木目金の模様はデザイン性が高く、その色合いが金の縁取りとも相まって大変華麗で、一般的に質素な印象が多い木目金の中で珍しい作品です。ストライプの様な木目の中に玉状の木目文様を組み合わせたこのデザインは、最古の木目金作品と称される小柄(刀に添える小刀の持ち手の部分)と同じ技法で作られています。

 

 

秋田県指定文化財 小柄 金銀赤銅素銅鍛銘 出羽秋田住正阿弥伝兵衛 復元製作 高橋正樹

この小柄を制作した正阿弥伝兵衛(鈴木伝兵衛重吉1651年~1728年)が木目金を考案した元祖です。
「正阿弥」という呼称、流派は京都の金工の名家が元であり、江戸期にその一門が全国に散在し発展しました。伝兵衛は江戸で正阿弥に弟子入りし修業後、秋田藩主佐竹家にお抱え工として仕え、素晴らしい刀装具の数々を残しました。そして「秋田正阿弥」の祖となったと考えられています。正阿弥派が庄内、会津、江戸、備前、 伊予、阿波などの各地に広がる中、秋田の一派が最も繁栄し屈輪彫りや木目金の新様式を確立しました。
今回ご紹介した鐔の模様を制作するためには、相当な大きさの地金を用いる必要があり、4種類の金属の板を溶けあわないように接合し加工することは大変な技術を要します。さらに出来上がった木目金の板を3枚はぎ合わせるという高度な技により、いっそう複雑な模様を生み出しています。金・銀・赤銅・銅を張り合わせた地金を用いたこの華麗な木目金は「秋田木目金」と分類され、その巧みな技 と優美なおもむきは他に類をみません。

この鐔は杢目金屋WEBでもご紹介していますが、11月の木目金フェアにて展示していますので、ぜひ実物を間近でご覧ください!