さくらだより




<第21回> モノグラムの祖となった家紋

  2019年5月16日

日本には代々家に伝わる紋章、今でいうロゴマークとして家紋があります。
杢目金屋が所蔵する江戸時代の木目金の小柄にも家紋入りのものがあります。

 

 

家紋の由来は平安時代にさかのぼります。貴族社会において、自然のモチーフを衣服や調度品の装飾に用いる中で、好みの文様を繰り返し使用している内に、家の象徴としての紋章へと発展したようです。また江戸時代以前の武家社会においては、どの大名の系列かわかるように、ひいては戦場において敵か味方かを区別するために用いられたと言われます。遠くからでも見分けが容易なシンプルな紋章が用いられていたようです。それが江戸時代の太平の世になり町人文化が発達するに連れ、歌舞伎役者や町人が「粋」を競い合って用いたことで広まったようです。
この頃には、代々受け継いで守っていくものとしての家紋にこだわらず、図形として装飾的なデザインとして楽しむ、いわゆる「家紋散らし」と呼ばれるものも登場しています。
革製品の一面にロゴマークを配した海外有名ブランドのモノグラムも実はルーツはこの「家紋散らし」からできたものと言われています。

杢目金屋では、ご結婚指輪の内側に家紋を刻印することができるため、ご両家の家紋を刻印される方も多くいらっしゃいます。

 

先ほどご紹介した木目金の小柄は、この「家紋散らし」と考えられます。

小柄の全面に配された複雑で繊細な木目金模様が下地となることで、そこに線象眼(せんぞうがん:タガネで細く彫りを入れた部分に金線を埋め込む技法)で描かれた金の家紋がより際立っています。

扇型の家紋は、木目金の元祖、正阿弥伝兵衛がお抱え工になっていた秋田の佐竹藩の家紋と同じものです。

木目金は、その模様表現により、主役にも名脇役にもなることができる装飾技術と言えます。